生前贈与、不動産、生命保険を活用する方法

相続対策には一体どんな方法があるのでしょうか?

代表的なものとしては、生前贈与・マンション購入などの不動産購入・生命保険の活用などが挙げられます。

生前贈与は現金で将来相続人となる方に贈与ができ、比較的手間がかからない方法ですので相続対策として非常に幅広く利用されています。

またマンション購入は物件探しや運営などの手間がかかるものの節税効果が高い事で知られています。そして生命保険は非課税枠の活用や納税資金の確保などの面でメリットがあります。

以下、それぞれの対策について簡単にご説明致します。

1.生前贈与

生前贈与とは、自分が生きているうちに他の人に財産を譲り渡すことをいいます。 自分が死亡する前までに所有財産を可能な限り減らすことで、相続財産を減らし、結果的に相続税負担を減らすことに繋がります。

ただし、生前贈与も贈与税がかかる場合がありますので、相続税と比べてどちらが有利であるかを慎重に検討しましょう。

生前贈与には「暦年贈与」「相続時精算課税」や各種の贈与特例があり、受贈者がそれぞれの事情に応じて選択します。

① 暦年贈与

名称通り、暦年(1月1日~12月31日)の間に受贈者が譲り受けた財産に対して贈与税が課される制度です。

贈与税には毎年、基礎控除額110万円があるのでその金額までの贈与であれば贈与税はかかりません。例えば10年間根気よく基礎控除額いっぱいの贈与を続けた場合には、1,100万円もの金額が無税で贈与できるのです。

暦年贈与は生前贈与加算の対象となっており、相続開始前3年以内に贈与された部分については、相続税の対象になりますのでご注意下さい。

死期を悟った贈与者が、急いで暦年贈与を初めても3年以内に死亡した場合には意味がなくなってしまいますので、暦年贈与を上手に使うには、死亡する何年も前から計画的に行っていく必要があります。

② 相続時精算課税

相続時精算課税とは、60歳以上の両親や祖父母から、20歳以上の子供や孫に対して贈与があった場合に適用できる特例で、合計2,500万円分までの贈与には贈与税がかかりません。

もし超えてしまった場合には、2,500万円を超えた部分の金額について一律税率20%で贈与税が計算されます。

そして相続発生時には、適用を受けた贈与財産の全額を相続財産に含めて相続税を計算する必要があります。

相続時精算課税のメリットとしては

  • 2,500万円までは贈与税がかからず、また超過分の贈与税の税率が一律20%になるので、贈与税の節税ができる。
  • 早期に財産を贈与できる為、相手が必要としているタイミングで財産を有効に活用できる
  • 収益物件を贈与すれば、その後発生する家賃や配当・分配金は相手の収入となる為、相続税対策につながるとともに、納税資金の確保が可能
  • 値上がりが予想される財産を贈与すれば相続税対策になる(相続時精算課税制度で贈与した財産は相続財産に持ち戻しますが、このときの持ち戻す金額は贈与時の時価である為、贈与時よりも相続時に時価が高くなるのが確実な財産であれば、「相続時の時価-贈与時の時価」の差額分だけ相続税を節税できます。)
  • 相続争いを防ぐことができる(相続させたい財産を相続させたい相手に生前贈与しておくことで、遺された相続人同士の相続争いを防ぐことができます。)

逆にデメリットとしては、

  • 相続時精算課税を選択した場合には暦年課税には戻れない
  • 金額の大きさに関係なく税務署への申告義務がある(暦年贈与の場合は基礎控除の110万円以内ならば申告義務はありません)
  • 相続時精算課税制度を利用して土地を贈与した場合、その土地に小規模宅地等の特例を適用することができなくなる(特例が適用されるのは、あくまでも相続した土地に対してなので)
  • 不動産の生前贈与は相続した場合に比べ、「登録免許税」や「不動産取得税」など、贈与税や相続税以外に発生するコストが増加する

などが考えられます。

③ 特例の適用

贈与者や受贈者、贈与資金の使い道などが一定要件に該当する場合には、特別な非課税枠が設けられています。

(ア)住宅取得等資金の贈与
親または祖父母から子または孫に、居住用家屋を新築・購入・増改築するためのお金を贈与した場合で一定の要件を満たす場合には、最大1,000万円まで非課税となります。

(イ)教育資金の一括贈与
親または祖父母から30歳未満の子または孫に、教育資金に充てるためのお金を一括で贈与した場合で一定の要件を満たす場合には、受贈者1人当たり最大1,500万円まで非課税となります。

(ウ)結婚・子育て資金の一括贈与
親または祖父母から20~49歳の子または孫に、結婚や子育てに充てるためのお金を一括で贈与した場合で一定の要件を満たす場合には、受贈者1人当たり最大1,000万円(結婚に関する支出は最大300万円)まで非課税となります。

2.不動産の購入

相続税の計算上、不動産については様々な特例が設けられており、その評価額は現金に比べ大きく減額されます。賃貸不動産などを購入して、財産の形を変えるというのも方法の1つです。

基本的に相続税上の不動産評価額は、土地は相続税評価額、建物は固定資産税評価額によって評価されます。

どちらも公示価格と比較した場合には、相続税評価額は8割程度、固定資産税評価額は7割程度となっており、現金を不動産にしただけで評価額が低くなります。

また不動産には①小規模宅地等の特例や②賃貸不動産の評価による減額も適用できる可能性があります。

① 小規模宅地等

小規模宅地等の特例とは、被相続人や被相続人と生計を一にしていた家族の居住用または事業用に使っていた土地が遺産の中にあり、更に一定要件を満たす場合には、評価額が最大8割減額される制度です。

1億円の土地が2,000万円となるのですから、要件に該当する場合には必ず適用を受けたい制度です。

② 賃貸不動産の評価減額

土地や建物を購入するだけでも評価額を2~3割減額することができるのですが、その不動産を賃貸マンションや貸家などとして賃貸にした場合には、使用が制限されている分、借地権割合や借家権割合が考慮されて、更に評価額を下げることができます。

例えば、借地権割合70%、借家権割合30%の貸家建付地1億円の場合には、

1億円×(1-借地権割合70%×借家権割合30%)=7,900万円

となり、更に2,100万円も評価額が減額されます。

ただし、不動産購入には大きなお金が動き、取得後にも様々な費用が必要となってきます。

次のような点を考慮したうえで、不動産購入は計画的に行うようにしましょう。

  • 不動産の購入にローンを組む場合、甘い返済計画を立てていると、後々返済に行き詰る可能性があります。
  • 賃貸物件は新しいうちはいいのですが、古くなってくると空室が目立つようになります。また、近くに同じような賃貸物件が建った場合などにも入居者が減ってしまう可能性があります。
  • 住宅には時の経過に応じて必ず修繕が必要になります。古くなればなるほど修繕の頻度や金額も上がってきます。また他の賃貸物件との差別化で便利な最新設備などを追加しなければならないことも多く、建てた後も継続的な資金投入が必要となってきます。
  • 不動産は預金等に比べ分割しにくい為、相続財産に金融資産が少なく複数の相続人がいる場合には共有名義にすることが多くなるのですが、共有名義にしてしまうと様々な問題が生じる可能性があります。


3.生命保険の活用

生命保険は、保険料を支払うための現金がある場合にしか取れない方法であるため、多くの現金を持っている場合に特に有効な方法です。

生命保険を使えば、遺言がなくても受取人を指定することができ、更に死亡保険金は受取人の固有の財産であるため遺産分割の対象になりません。

よって、受取人が相続放棄している場合であっても死亡保険金は受け取ることができるため、自分の渡したい人に確実に現金を渡すことができます。

また、死亡保険金は相続税法上、課税財産となるのですが、非課税枠「500万円×法定相続人の数」がありますので、その金額までは相続税はかかりません。

ただし非課税枠は受取人が相続人である場合に限り適用される点に注意が必要です。

仮に、自分の相続人となれる人以外の人を受取人として契約してしまうと非課税枠の適用がないうえ、相続税の2割加算の対象となってしまいます。

まとめ

節税対策や納税資金確保などの各種相続税対策は早ければ早いほど良いとされています。なぜなら、早く考えておくことで選択肢が広がり、また長い期間をかけて対策を実行することでより効果が期待できるからです。

特に認知症になってからでは、有効な対策を取ることができなくなってしまいます。その為にも相続に関する問題や不安は今のうちから検討しておくことが大切です。

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