●デューデリジェンス(Due Diligence、以下「DD」)とは、買い手企業による売り手企業の実態を詳細に調査する行為です。売り手企業の潜在的なリスク要因を明らかにするために実施されるもので、その結果は買収価格の決定や買収スキームの選択に大きな影響を与えます。
売り手企業の規模や複雑性にもよりますが、デューデリジェンスは財務、税務、法務、労務、ビジネスなど幅広い領域で実施されます。
このうち財務に関するDD(財務DD)が我々公認会計士のメインの担当です。
主に、実態純資産、正常収益力、簿外債務の有無、キャッシュフローの状況、内部統制の状況、買収後に生じるリスクなどを把握することを目的とします。
また、税務・法務・事業デューデリジェンスなど他のデューデリジェンスと並行して実施することもあり、双方のデューデリジェンスで発見された事項を共有して調査範囲を広げたり絞ったりすることがあります。特に中堅中小企業の決算書は実態から大きくかけ離れていることがあるため、財務デューデリジェンスの実施は必須といえます。
調査対象とする資料は決算書や総勘定元帳、具体的な証憑類、予算・事業計画書、監査法人による報告書、役員会の資料、銀行に提出した資料などです。また簿外債務を把握するために、雇用・不動産・法務関係の資料や契約書なども調査対象に含められます。
●財務DDでは、M&A対象企業(事業)の財務面について、売り手企業より提出された財務諸表の検証を中心に、帳簿記録による過去の財務データのみならず、DD時点での資産や負債の実質的な価値の評価や、事業計画の妥当性など将来の収益性を確認する調査にも焦点があてられます。
この他、簿外債務の有無の検討など財務諸表に現れない潜在的なリスクを洗い出すことも重要です。
ここで簿外債務とは財務諸表に記載されていない債務であり、代表的なものとしては他社の借入への債務の保証や従業員への未払残業代・給与や退職金、進行中の訴訟案件など様々なものがあります。
簿外債務と聞くと、財務諸表の粉飾を目的に意図的に財務諸表に記載しないケースをイメージしがちです。
しかし、中小企業では法人税の申告目的で財務諸表を作成していることが一般的です。
法人税では、法律上の義務や債務が存在していても、その債務や金額が確定していない場合には費用や債務の計上が認められないケースがあり、結果的に簿外債務が存在すること自体は珍しいことではありません。
税法上計上が認められていないとはいえ、債務として将来の支払義務が存在しているため、企業価値の評価上は考慮する必要があります。
●財務DDは公認会計士による会計監査の手法と共通点が多く手続きに慣れているということもあり、公認会計士に依頼するのが一般的になっています。当事務所も財務DDを取り扱かっていますのでお気軽にご連絡下さい。